ちょっと暗いので苦手な人は注意。
テンゾウを拒否する先輩に萌えます…。←と書くと別のシチュでもいろいろ妄想できそう(節操ナシ・笑)
* * * *
辛い経験をしている者ほど、他人に優しくできるというけれど。
それは何かの間違いじゃないかと思う。何故なら、他人によって抉られた穴は、常にそこを埋める生贄を求めている。
好きで好きで、大事なはずの先輩の、苦痛にうめく声がボクを昏く笑わせる。
泣く先輩を上から眺めている時ほど、ボクを興奮させる状況はない。
こういう時、ボクは人としてどこか欠陥があるんじゃないかと思う。
「痛いのが嫌なんじゃなくって、もうテンゾウがヤだっ」
そんなことを言われたって、先輩が望むようなまともな痛みはこの心には走らない。
あるのはむしろ、大好きな先輩によって存在を否定されたために生じる、陶酔してしまいそうな、ねっとりとした悦び。
「嫌い、ね。こんな気持ちにさせてくれるのは、あなただけですよ。カカシ先輩」
木遁で縛り上げた先輩の体が、負荷に耐えかね軋んで白く柔らかい肌も変色していく。
逃げるのは許さない。
この腕から出る己のものではない術に、明らかな嫉妬と嫌悪を感じながらも、ボクは先輩の体を離せない。
「好きですよ」
感情に連動する木々にますます力が入ってしまったようで、先輩の顔が苦痛に歪んだ。
力を緩めようと思うのに、その唇から罵倒を聞きたいのか、ボクは先輩を解放することがどうしてもできない。
「テンゾウ…」
目が合ったから、ただ無感動に見つめ返した。
「…離して、よ…テンゾウ…」
「……」
「テンゾウ…お願…もう、体ツラ…い…」
その気になれば本当はいつだってボクを殺して自由になれるはずの先輩が、涙を滲ませ懇願することには何の感慨もわかなかった。
ただ。気絶するのは可哀想だと。そう思って、唐突に先輩から触手を引いた。
倒れこんで咳をする先輩に手を伸ばして、背中をそっとさすってやる。
「嫌だ」と叫んでボクの手を振り払うかと思ったのに、先輩は逃げずに大人しくしていた。
体の節々が痛むようで、窮屈そうに身じろぎしている。強張ったままの頬に手をあてても何も言わない。
先輩はボクの優しく動く手に瞳を閉じて、もっと撫でろと無言で要求していた。
さっきはあんなに嫌がっていたのに。
優しくすると縋りつくなんて、そんなの卑怯だ。
「先輩は優しいのが好きなんだね。そんなの、ホントの愛情とは限らないのに。馬鹿だね」
ボクの口をついて出たのは、それは思いやりの欠片もないような、皮肉で。
面倒くさそうに目蓋を上げた先輩は、憮然として抱きついてきた。
「いいもん別に……。俺はテンゾウが俺に優しければそれでいいの」
その言葉にため息をつき、ボクは狂暴な感情を押し殺して、少し笑った。
無題
無題
松本様
のぎわ様