「隠れているものって、なんだか無性に暴きたくなる気持ちになりませんか」
無残な血痕を涼やかな目元で一瞥し、『木遁のテンゾウ』はそう嘯いた。
土遁使い相手に下手を打った屍が、ひとつ、ふたつ、みっつ。
「例えば、先輩の」
すっと動く指は、土にも血にも濡れずにきれいなままだ。
銀髪の下の俺の耳朶にほんの数瞬だけそっと触れ、テンゾウの唇が微笑んだ。
言葉のない、闇の中に沈黙する忍びがふたり。
俺は「生意気言うんじゃないよ」と、いずれは身の内を暴かれることになる男に背を向けて。
そうして持ち替えた刃で、向こう側に潜む気配をふたつに裂いた。
****
↓降ってきた時の元々のバージョン(本当はテンゾウ視点だったけど…orz)。
何の前触れもなく耳朶に触れられ、心臓がはねた。
「な、なに」
言うなれば最近よくツーマンセルを組んでいるこの後輩には油断していたのか。自然な動きでたやすく俺の懐に入ってきた男から距離をとり、俺らしくもなく、動揺する。
「ああ」と、俺の反応を見て逆に目を丸くした男、テンゾウは、すぐに真顔に返って伸ばしていた手を下ろした。
隠れていた耳に、突然触れたくなった。その時そう弁明した彼は、「ちょっと待て。どうしてそんなところ触りたがるの」と抵抗する俺にまた似たようなことを言った。
「恋人同士なんだから、いいじゃないですか」とも。
そして声を噛み締める俺にさらに囁く。
「隠さないで」
PR