* * * *
独占欲だなんて上等なものじゃない。
そもそもが精を吐き出すこととその前後に特別な感慨なんてない。
深入りしないようにというよりは、深入りさせないように気をつけて。だから、その女に対する気持ちは仲間というもの以上でもそれ以下でもなかったはずだ。
だが、『それ』が度重なると、さすがに意識の片隅に障る。
体を繋げたことのある男女というのは、ふとした瞬間に自覚も無く艶な雰囲気をかもし出すものだ。
あるいは自分もそうなのかと自戒の気持ちを抱きつつ、後輩の男の珍しく優しさのにじんだ表情を盗み見て内心で舌打ちをする。
何人目だ。これで。
「どうゆうつもりよ。お前」
偶然か必然か。だが、悟らせるような態度に出るには、それなりの理由があるんだろうが。
「……何のことでしょう」
「俺の口から全て聞きたい変態かよお前。……俺が寝た女寝た女、いちいち手をつけられると気に障るんだけど」
「そんな覚えはありませんけど」
面白くもなさそうな顔で否定する後輩を前にして、らしくもなく俺は感情的になった。
「じゃあ、俺の性癖を女に聞き出そうとするのやめてくんない?」
恐らく反駁しようと口を開きかけた後輩は、そのままの形で言葉も無く思考タイムに入りやがった。
据わっていた目がほんの少しだけ翳って鋭さが弱まる。
開いていた口が閉じる。
不自然な沈黙がさらに延長される。
……何だ、その間は。
苛々して腕を組んでいると、眉間に皺を寄せた後輩が急に「わかりました」と深刻な声で言い踵を返そうとした。
「待て待て。何が『わかった』んだ。お前」
「すみません」
到底すまないと思っているようには思えない太い声で言い捨てて後輩は逃げ、その後も微妙に避けられ、そのくせ意識されている気配を感じるために。
俺は女と駄目になった。
稀に感じる暗い瞳に見張られている気持ちになってしまい、迂闊な行動ができなくなった。
また俺が誰かを抱いて、それをまたあの後輩が果たして今まで通りに組み敷くのかどうか。
思わぬ人間と思わぬ緊張関係になったことを、俺は密かに笑う。
確かめるのも悪くは無いが。
俺はその答えを知ることを、今はまだ保留にしている。
* * * *
我慢してると溜まると思いますよカカシ先輩。
ぐおお…
まつもとさぁん