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忍禁書外伝的日々妄想

基本ヤマカカで暴走モード。完全腐女子向け。
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『いつか白く塗りつぶして』(テンカカ)

ちらちらと視界に入り始めた雪が、暗部コートの肩や腕にとまっては溶けた。
ツーマンセルを組んでいるテンゾウが、憂鬱そうな仕草で空を見上げる。
俺たちは無言で帰還の足を速めた。任務終了後まで、無駄に寒い思いをする必要はない。
森を抜け平地に出た時、そこは一面の銀世界だった。
数字にすればたった数センチ積もっただけだろうが、まだ誰にも踏み荒らされていない雪原は、束の間、目を白く灼いた。
俺もテンゾウも普段からそう饒舌な方ではないが、いつもにも増して会話がないのは、きっと、天から惜しみなく降り注ぐ雪のせいだ。
さくさくと音を立てて、すべてを白く塗りつぶしていく。
そう、ずっと黙ったままでいるテンゾウの瞳が、今でない過去を思い出して遠くなっているのを俺は見逃さなかった。
あの時、確かに雪が降っていた。
惨殺されたくのいちの血に濡れた長い黒髪は、優しくも残酷な雪によって隠され、存在をただの白い塊りに変えつつあった。
痛みの表情を堪えていたテンゾウは、今も雪が降る度に彼女を思い出しているのだろう。
あれは、本来テンゾウが請け負うはずの任務だった。
誰が悪いわけじゃない。ただ、運と巡り会わせが悪かっただけだ。そう割り切るには、結果が最悪なものになりすぎていたが、では、果たしてテンゾウは、降雪の音を聞いた時以外にも彼女を思い出しているだろうか、と。
木の葉では滅多に雪は積もらない。
まだ頬に幼さを残していたテンゾウが、里外で雪の降るのを見上げて、無邪気に喜んでいたのを思い出す。
言葉もないまま帰還を急ぐ俺たちの頭上からは、止む様子のない雪が絶え間なく降り注ぐ。
俺は、もしその瞬間が任務中に訪れるのならば、テンゾウの目の前で死にたいと、馬鹿げた事を何故か思った。
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