日々暗殺に明け暮れている(らしき)男たちの平均年齢は低い。
そのため必然的に独身の者が多いという事情もあって、彼らの大半は暗部独身寮に入れられている。
忍びとしても男としてもあらゆる面に向けて今が最も血気盛んな年頃の彼らのこと。任務だけでは滾る血を抑えきれず、寮内は時として修羅場と化す。
それは動物的本能を刺激する食事時に、特に顕著だ。
『ごめんね、すなっおじゃなくって』
「なくってー!」
『夢の中なら、言えっる』
「言えっるー!」
食事の時間は特殊な訓練のある日以外は、きっかり7時から一時間。ちょうどその時間帯に再放送されているアニメを見ながら、彼らは壊れる。
『月影様に代わって、お仕置きいたす!』
「お仕置きー」
「お仕置きー!」
「成敗いたす!」
「お仕置きー!」
常に発散していないと、ありあまるエネルギーを消費しきれないのだろう。
その中でテンゾウはあまり表情を変えないままもぐもぐと口を動かしていた。しかし目線はしっかりテレビに釘付けになっている。
画面に主人公の使い魔の黒い猫が現れた。
「テンゾー!」
「テンゾウキター!」
「テ・ン・ゾ!」
「テ・ン・ゾ!」
「……」
テンゾウとその猫が似ていると言う仲間たちは、大喜びでテンゾウコールを繰り返している。
いつものことなので特に動じず食事を続けるテンゾウの頭には、いつの間にか黒い猫耳まで装着されている。
彼らの暴走は拷問部出身の寮長でさえ容易には抑えきれない。
毎日が修羅場の食堂に、任務帰りのカカシが入ってきた。
「もー。皆、テンゾウのことおもちゃにするのやめなよ」
「あっ、カカシさん。今、俺がサンマ定食をお持ちします!」
「カカシさん。こちらに席空いてます!」
「お疲れ様です。カカシさん」
「ああっ! カカシさんが出たー!」
「ヘンシーン! お仕置きー!」
「お仕置きー!」
「カカシさーん。お仕置きしてー!」
「きゃー!」
「…もう、ばっかじゃないの」
クールな振る舞いがカカシに似ているという美少女の変身シーンに合わせて、暗部の男たちはポーズを決めたり歌ったり大騒ぎしている。
無表情だったテンゾウは、チラリとカカシを盗み見てから、さっとうつむいて顔を隠した。
* * * *
単にお馬鹿な暗部と少年テンゾウが書きたかっただけです…。元ネタのあにめは、見たことないのでよく知りません…。
無題
無題
無題