だってお前が好きなんだもん（テンカカ）

「すいません。ちょっと黙っていてくれませんか。先輩」

「びっくりするから大きな声出さないでください」

そんなセリフを優しい声で言うテンゾウに萌え。
テンゾウは悪気なく先輩を傷つけているといいです。
↓は玉砕SSS（笑）

自分でも、ここ最近の落ち着きのなさは異常だと思う。
「でね、猿面が討ち洩らした男が、実は砂隠れの里のいわゆる暗部で、あいつ手の内知られちゃったんだって。でもさすがにまた会うことはないって思ってたんだけど、その逃がした忍びの恋人がね……あっ、恋人だってわかったのは死に際にそいつの名前を呼んだからだって話なんだけど、猿面の術の破り方を知っていて危うく殺されそうになったんだって」
「はぁ」
「で、でね。あっ！　そいつら恋人っていっても男同士だったって話なんだよ！？　すごいと思わない？　テンゾウ！」
「はぁ。そうですね」
「あっと。話はそこが重要なんじゃなくってね。猿面のやつ、運の悪いことにまたその討ち洩らした男に任務で遭っちゃったんだって！　あれだよ。あれ。仇ってやつ。そういう因縁の深い目で睨まれると、気迫に負けて戦闘力落ちちゃうんだよね。っと、俺の言いたいことはそうじゃなくて、そいつの使う術がね、テンゾウがさっき相手していたのと同じでね…って、俺の話聞いてる？　テンゾウ！」
こちらに背中を向けて、細心の注意を払いながら印を結び忍符を仕掛けていたテンゾウが、深刻な顔で振り返った。
「カカシ先輩」
「え。なに、テンゾウ……」
突然の視線に驚いて怯むと、テンゾウがいつもの柔らかい声で、静かに言った。
「ちょっと。すいません。少し黙っていてくれませんか。先輩」
「～～っ」
傍らの石を蹴りながら、うつむいてしまう俺……。
あああ。バカバカ。何だかわからないけど、バカッ！
忙しく動かしていた手を止めて、最後に地面に手の平をつけて数秒間目を閉じていたテンゾウが、ふぅと息をついてすっと立ち上がった。
そして俺に向かってニコリと笑う。
「ここは全部終わりました。次に行きましょう。先輩」
「う、うん」
二人で夜の闇に溶け込みながら、移動する。
テンゾウは何も言わない。今話さなければいけないことも、特になし……。
しゅんとしながら、何となく俺はテンゾウの後ろを走っていた。
ふと、前を走っていたテンゾウが俺を振り返る。びっくりして転びそうになってしまった俺に気づいているのかいないのか、テンゾウは笑いを噛み殺すような表情で言った。
「それにしても、先輩って意外とおしゃべりですよね」
「う。そ、そう？」
……本当はね、俺は元々饒舌な方じゃないのよ、テンゾウ。
「さっき何話してたんですか。術に集中してたので、よく聞こえなかったんですが」
うわなにその優しいお兄さんぶった顔と声は……。は、反則。
「先輩？　あれ。何で返事してくれないんですか。その。……え？　ひょっとして、拗ねてますか？」
拗ねてるってなによ。子ども扱いか、俺！？
「何でもない。別に、大した事じゃないからっ」
ぎん、と写輪眼まで出して言うと、テンゾウは黙った。
黙らせておいて何だけど、俺はというと、泣きたくなる様な自己嫌悪。
上手くいかない。
テンゾウといると、自分でも何だかよくわからなくなる。
「だって、……なんだもん……」
「え？　何か言いましたか先輩」
「……」
だって、好きなんだもん。
こんな気持ち初めてだから、どうしたらいいかわかんない。
「先輩？」
途方にくれた俺を気遣うように見るテンゾウの視線が痛くてたまらない。
任務が終わったら思いっきり泣こう……。
成就するなんてとても思えない初恋だったから、俺はますますうつむいてテンゾウの視線を避けた。
人殺しなんてしてるから、バチがあたったんだ。
なんて……。それこそバチあたりなことを思って、俺はこっそりと涙ぐんだ。