鳥につつかれ、獣に喰われ。
今や敵味方の判別どころか人としての形状すら保っていないそれらの持ち主達は、例えその場を生き延びていたとしても、今やこの世の者ではなくなっているだろう。
肉片を集め、手厚く葬り。手を合わせて死者を悼みながらも、その中に己の恋人がいないことを願う。
一縷の望みという言葉が、これほど心身に重く圧し掛かってきたことはない。
テンゾウの消息が途絶えた街で、俺は黒猫を拾った。
汚く、反抗的で、そして瞳の大きい猫を。
「ねえ、お前。本当はテンゾウなんでしょ…」
無理やり懐に入れて宿に連れてきた黒猫は、俺の問いかけにふうぅという低い唸り声で答えた。
碌な餌にありつけていないのか、痩せて体も毛羽立っている。
俺は両の掌の中に拘束したその細い体に自分の額を押し付け、懇願した。
「お願い。テンゾウだって言って。生きていると言って」
猫は暴れた。
俺は己の両目が潤むのを自覚した。
「嘘つき」
声が情けないほど震えている。
物言わぬ猫を押さえつけながら、俺はまた力なくうめいた。
「嘘つき……」
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Mさんちの猫犬テンカカに触発されました…!