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忍禁書外伝的日々妄想

基本ヤマカカで暴走モード。完全腐女子向け。
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『縄張り(テンカカ)』

警戒しているくせに触らせるのが好意表現なんて、まるでどこぞの野良猫のようだ。
あいつは、あっけないほどにすぐに俺になついた。
年下の、それもいわくつきの経歴の部下を初めて持つ身だった俺は、当時はらしくもなくそれなりに緊張などしたものだ。
不遜な顔つき。
痩せた体に目だけがぎらぎらしていれば、正直あまり印象はよくない。
だが、俺の前にちらつかせる傷口。肉の色。
そう、いつからか、あいつは意図的に治療を怠るようになった。
「ダメでしょー。テンゾウ。出血多量で、倒れる、よ」
「っ…く」
ぎゅ、と縛られた傷口に連動して、息を止めた唇が次の瞬間には痛みから解放され弛緩して息をこぼす。
蒼白になっている額に手を伸ばし、血塗れた前髪に触れてもテンゾウは動かない。
「他に痛いところは?」
「……」
「ん?」
俺に触れてほしいこの年下の男は、腕の傷をなめられても微動だにしない。
至近距離で見つめても目を逸らしもしない。
照れなんて微塵も感じさせない、仏頂面。
まったく。
かわいいじゃないの。
無防備に己をさらすなんて真似は絶対にしないくせに、かまってほしいオーラびんびんの後輩の傷口を、俺はなめ、そして縫い付けた。
そして、冷たい雨の降る野営地で。
震える黒い猫を抱き上げ、俺はその痩せた体に滴る水を手の平でぬぐった。
「お前、偵察にこんなかわいい格好で行って来たの」
見つかったら捕まっちゃうでしょ。
目だけがぎらぎらと大きい黒猫は、雨水をぬぐってやってる俺に甘えるどころか反抗的な態度で嫌そうな声を出した。
「馬鹿だねえ。腕力で俺に敵うとでも思ってんの」
ひげをつついて少しからかってやってから、ちょいと思いついてキスをしてやる。
どうだ。
男にちゅーされるなんて、初めてだろう。
ふいに背後から声がかかった。
「……先輩、何ですか。そのいかにもみすぼらしい猫」
「んん? あれ?」
雨に濡れて寒々しい姿のテンゾウの目は、仔猫相手に大人気なくも随分とまた尖っていた。
交戦もなかったのだから当たり前だが、無傷で帰って来たテンゾウは所在無さげに立ち尽くして、俺の手の中の猫を睨んだ。
あらあら。
俺は人違いだった猫を放してやり、テンゾウに向かって手を広げた。
無傷でも、もちろん抱いてやるよ。
「おかえり。俺の猫ちゃん」

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