まつ様のところのめちゃくちゃキュートな猫耳テンカカに、のぎわさんとふたりで萌え倒しました。
そんなチャットの生成物。
最近「可哀想でかわいい」が萌えワードです。こんなテンゾウも萌える…。
* * * *
思い出すだに、独り言の多いオカマだった。
『見目はいいのにねぇ。もったいないわぁ。オッド・アイにしようとして赤い目を移植した方の目蓋には傷がついちゃったし、しかも閉じちゃって滅多に開こうとしないのよこの仔は。愛玩動物のクセに媚びうることもできないし、それに何より面構えがねぇ、カカシ君』
尻尾を握られて、俺はふぎゃあ!と牙をむいた。「ホントに生意気ねぇこの仔はあ」とさらに痛い目に遭わされただけで、もちろん敵いはしなかったが。
売りに出されるには少々トウが立ち過ぎていて、もう少し経ったら廃棄処分か種猫か、という運命の転換期を迎える頃、俺は鎖を引きちぎってペットショップから脱走した。
逃げるついでになんとなく、クローン猫のテンゾウも連れてそこを出た。
蛇オカマめ。何やら特殊な遺伝子を埋め込む実験にのめり込んでこいつには相当目をかけていたから、逃げられたと知れば悔しがるに違いない。
ほくそ笑む俺とは対照的に、無理矢理俺に連れ出されたテンゾウの表情は暗かった。
もとより脱出にしり込みしていたテンゾウは、建物から出た途端日の光に驚いて余計にびくびくしている。
俺はテンゾウの首輪から伸びている鎖を引っ張った。
「これからは野良として逞しく生きていくよ、テンゾウ」
「……はい」
声が小さい。声が。
もともとこいつは人生をどこか諦めたような辛気臭い顔してるんだーよね。連れの人選間違えたか? と思いながら、とぼとぼ後をついてくるテンゾウを振り返る。
「テンゾウ」
「な、なんですか」
「ちょっとあの魚屋から秋刀魚盗んできなさいよ」
「えっ!?」
テンゾウは脱走したばかりなのに、早速ですか…? と上目遣いで見てきたけど、俺は顎でしゃくって早くと促した。
えいやっ!と必死の突撃隊になったテンゾウは、なかなかに見所のある雄だった。まだまだ慣れない任務のためか、ちょっとへっぴり腰ではあったが。
野良猫界の帝王になるのもいいかと思う反面、俺に惚れた雄に大事にされかしずかれ貢がれる生活を夢見ている俺としては、「なかなかやるじゃない」と遠慮なくあがりを頂戴した。
テンゾウはほとんど骨だけになった俺のお残しをぺろぺろなめていて、やっぱりそれでは足りなかったらしい。
腹をさすって屋根の上で横になっている俺の隣でしばらくうつむいていたが、再び餓えた決死の突撃隊になって魚屋に飛び込んで行って捕まっていた。
どうせならそこで飼われろ、と見捨ててもよかったが、人間の罵声に脅え丸まってぶるぶる震えている様子を見てしまったら、なんか、ねぇ?
颯爽と助け出してやったら何やら尊敬の念いっぱいに感謝されたが、腹は減ったままのようだった。やれやれ。
こういうのも、縁っていうのかねぇ。ガラじゃないんだけど。
「これ食べて、元気だしな」
救出ついでにくすねてきた鯛を食べさせてやる。
「すごいです。先輩!」
ふん。バカめ。俺は自分に出来ないことを他人にやらせるほど無能ではない。鍛えてやっているのだ。
脱出してから初めてにぱっと笑ったテンゾウを思いがけず「かわいいかも」なんて感じながら、俺はあくびを噛み殺した。
さて、明日からはこいつをどうこき使おうか。
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